ふるさと


「もうすぐあの場所が見えるね」
君は嬉しそうに呟く
冬の風は冷たくて
どこまでも行けるはずなのに
すぐにくじけてしまいそうになる

「大丈夫？」
君は優しい声で問う
心配しないで
もう少しで着くのなら
頑張れるはずさ

ほら
小さな川が見える
優しい日差しの中で
きらきらと輝いて
覚えてる？
その先は広い湖
君と僕が
同じ時間を過ごした場所

「ああ、懐かしいね」
君が目を細めて言う
柔らかな水面(みなも)
霜の降りた草木
僕達は戻ってきたんだ
優しいふるさとへ

「おかえり」と
むかえる言葉はないけれど
僕達は帰ってきた
生まれ育った
美しいこの場所へ





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